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DA VINCI MODE(4)

Generative Learningのための8つの技法

· 学びの眼鏡

みつかる+わかるモデルの3つのステップ

 前回は「みつかる+わかるモデル」がレオナルド・ダ・ヴィンチの学びと重なっていることをウォルター・アイザックソンの分析から確認してみた。重要なのは、まず、知的好奇心の赴くまま、<不思議の種>をつむぎ、それをじっくり観察して「知図」を描くことである。「知図」上に、観察した様子と自分の仮説を書きつらねる。その枚数が貯まれば、どうしたって自分の仮説が正しいか、検証したくなるものだ。そしたら、自然と「わかるモデル」に突入する。本を読んで、先人の考えを確認する。それを踏まえて、さらに観察を加えて、仮説をさらに進化させる。進化した仮説を検証し、自分の「論」として表現する。この方法をレオナルドは徹底した。ここで強調したいのが、「知の泉」である「知図」の大切さ、である。「知図」を描き、溜め続けることこそ、レオナルドに近づく唯一の方法なのである。

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 みつかる+わかるモデルは、3つのステップで構成される。(1)Feel℃ Walk(2)Fusion Walk(3) Fantasy Walkである。

(1)Feel℃ Walk

テーマ「発見」の感度を高める歩きを、我々は"Feel℃ Walk"と呼ぶ。Feel(感じる)℃(温度)を高めるという意味を込めている。時間に制約がある学校の授業におけるフィールドワークは課題が与えられ、その解決策を現場を観察したり、街の人にインタビューして「課題解決」に導くものがほとんどである。しかし、課題が与えられる時点で、自ら課題を発見する力が削がれている。これではオリジナルの着眼点など到底育たないだろう。その点から言えば、我々のFeel℃ Walkは「発見」のフィールドワークと言える。ありきたりの言葉で言い換えれば、我々のフィールドワークはCuriosity Driven(好奇心駆動)であり、企業のようなMission Oriented(ミッション志向)ではない。

(2)Fusion Walk

Feel℃ Walkで導いた「仮説」をさらに歩いて情報を収集し、融合(=Fusion)することで、仮説のレベルをあげる。そのために歩く。歩きながら考えるのである。さらに現場の人と話して、仮説に融合させる。また、本を読んで、新たな視点を融合する。そして、先人が到達し得なかった未来の仮説を導くわけだ。

(3) Fantasy Walk

最後に、Fusion した仮説を自らの「論」として表現する。仮説の表現方法は1つではない。エッセイ、学術論文、演劇、音楽、小説、映像、プレゼンテーション、料理と表現方法は千差万別である。しかし、ここではエッセイにフォーカスして解説していくことにする。

Generative Learning(内発的に好奇心が湧いてくる学び)の考える道具は8つある。今回はFeel℃ Walkを行う1~3に絞って解説しよう。これを読んで、天才を育む知図づくりに生かして欲しい。

道具1:探検の五原則

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 この五原則は人類学者の川喜田二郎先生によって、「野外科学」で学びの種を発見する上で、生み出されたものである。

 まず、フィールドに出たら「原則4:なんだか気になるものを全て取り込め」から始める。気になる花、気になる建物、気になるものを全てスマートフォンで写真で撮る。これが大事だ。気になるものをただ押さえる。

 その態度が「原則2:飛石づたいに取材せよ」につながる。関連性なんて考えなくていい。ただ、現場で得たヒントや感覚にしたがって、飛石づたいに動いてみよう。その際、感覚は全方位に注意を向けることが大事だ。

 「原則1:テーマをめぐって360度の角度から取材せよ」につながる。空を見て、気になったカラスでもいいし、自宅の前にある苔の生え方でもいい。あるいは電柱の形でもいいし、信号の形でもいい。近所の神社に行ったら、御祭神は誰かを調べて、神社巡りをした時に何か見えてくるかもしれない。なんでもいい。生きているこの世界を丸ごと全方位で見渡してみよう。

 そして「原則5:データを<定性的>に豊かにとれ」だ。数値化できるものがデータという認識はやめる。自分が見たものをじっくり「観察」することが「発見」につながる。そして、どういう構造になっているかをメモし、絵にする。これは人類学者がやっていた定性的なデータの取り方である。

 最後に「原則2:ハプニングを逸するな」である。不思議の種はハプニングがもたらすことが多い。科学的大発見は、ほとんどがハプニングから生まれている。計画通りなんて言葉は必要なし。現場で起こるハプニングを楽しみながら、その意味を面白がるように観察しよう。

道具2:水平思考

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 エドワード・デノボが発言している「水平思考」も「発見」のFeel℃ Walkにはとても大切な考え方だ。水平思考は「脇道にそれる思考」だ。これは、まさに川喜田先生の「飛石づたい」である。知的好奇心が赴くままに、どんどん脇道にそれて、面白いもの、不思議なものを収集する。なぜ、自分の直感で脇道にそれることが大事なのか。それは「他の人が考えもしない独自の視点で対象を見る」トレーニングになるからである。本を読んでしまうと、書いてあったことの検証することに徹してしまう。無意識にこの検証モードになってしまう。この弊害から逃れるためにも水平思考をマインドセットして歩き始めよう。垂直思考と比較したのが上の図である。垂直思考は、大学のゼミナールで、本を読んで論文を仕上げる時の思考モードと言った方がわかりやすいかもしれない。この垂直思考を「発見」のFeel℃ Walkに持ち込まないようにしよう。このモードチェンジをわかっていない人は多い。「発見の学び」は「水平思考」モードで行うことを肝に銘じておこう。

道具3:知図化

「知図」の作成手順は、9つのステップがある。

1)「探検の五原則」にしたがって、あてもなく好奇心の赴くまま、水平思考で歩き、気になったものは全て写真におさめる。

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2)歩いて遭遇した看板の説明や現在地がわかる街の地図は貴重な情報源になるので、それも写真におさめておく。

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3)帰宅したら、記憶が鮮明なうちに「知図」を描き始める。紙の大きさは後から見てわかりやすいサイズを選ぼう。A4かA3サイズがお勧め。

4)まず、歩いた範囲をグーグルマップで確かめ、その範囲の簡単な地図を描く。鉄道、川、大きな道路程度で十分。

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5)次に自分が歩いた道を地図で確かめ、気になったポイントを全て地図に書き込む。

6)気になったポイントのイラストを描く。うまい、へたは関係ない。

7)さらに看板情報や現地の人から聴いた情報を書き込む。まず知図に書き込む情報はフィールドで収集した情報のみにしよう。

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8)知図を描きながら、思い浮かんだ仮説やアイデアも書き込んでおく。

9)時間があれば、色を塗る。知図がとても美しくなる。

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